【コラム】育種家・國枝啓司が語る、「ばらを育てる」ということ

【コラム】育種家・國枝啓司が語る、「ばらを育てる」ということ


Farmツアーも再開できない今、
WABARAが考えていること、國枝啓司が考えていることをみなさまにお伝えしたいと思い、そして、私たちも未来のWABARAのために記録しておきたいと思い、國枝啓司へのインタビューをお願いしました。


不定期の更新ですが、農園の風景とともにお楽しみいただけると嬉しいです。


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今回は「ばらの育て方」や「切り花の楽しみ方」について。「難しく考えないで大丈夫」、そう仰る國枝啓司のばらとの向き合い方とは?

 


愛情を持って接してあげる


− 初心者でも自宅で上手に育てることはできますか?
私自身、「いつになったら一人前になれるんだ」と思ってしまうくらい、日々ばらと向き合いながら色々なことを学んでいます。本当に毎日発見ばかりなんです。そうお話すると「やっぱり難しいのかな」と思われてしまうかもしれませんが、難しく感じることも含めて楽しんでいただきたいと思っています。

− 土作りのお話を伺ったときに「和ばら作りで大切なのは土です」とお話されていましたが、自宅で育てるときにも土に重点を置いた方が良いのでしょうか? 
もちろん土作りは大切です。でも、良い土を作るには長い年月が必要になりますから、ご自宅でこの農園と同じような環境にするのは中々大変だと思うんです。一番大切になってくるのは「気にかけてあげる」ということだと思っています。



− ばらに声をかけてあげる… とか、そういうことですか?

そうですね。これは切り花でも同じことが言えるんですけど、声をかけてあげたり、気にかけて水をこまめに換えてあげるかどうかで、同じお花でも花持ちは大きく変わってきます。やっぱり声をかけてあげているお花の方が長持ちしますよ。声をかけないってことは、あまり気にかけてあげられていないので、必然的に水替えも少なくなってしまうでしょう? そうすると、すぐしおれてしまうんです。

− ばらも人間と一緒で生きているんですね。
そうそう。その人がどれだけ愛情を持って接しているかがちゃんとお花にでます。だから私もついばらに向かって「この子」「この人」とか呼んでしまうんですよ。うちの農園スタッフも「◯◯ちゃん」と呼びながら世話をしていたりしますよ。

自分で育てる喜びを感じてほしい


− 愛情を持って接することで、自分自身も優しい気持ちになれそうですね。
園芸苗も、自分で大切に育てたばらが花を咲かせると、その喜びはとても大きいです。お客様にも苗を通して「育てる喜び」を感じていただけたらと思っています。あと、ぜひ苗をご購入いただいたお客様には、自分で育てたばらを誰かにプレゼントしてほしい。

− 自分で育てたばらでブーケを作ってプレゼントできたらとても素敵です。
本当にそう思います。自分でブーケを作れるほどのばらがないというお声もありそうですが、一輪だけでもいいんです。お花屋さんで仕入れてきたお花の中に、一輪だけでも自分の育てたばらを入れてみる。それだけでとても気持ちの込もった特別な贈り物になると思いますよ。

「生きている」とはどういうことかを考える


− 新しく「Rosie おへやで育てるばら」というプロダクトも始まりましたね。

「Rosie」は息子の新しい提案なんです。園芸苗はたくさんの土の中で育てるものですけど、あのばらなら、台所とかリビングに置いておけるので、苗を育てることができない方にも良いですよ。根っこがあるので切り花よりも枯れづらいですし、より長く楽しんでいただけます。

− おへやで上手に育てるためのポイントなどはありますか?
お花を付かせるためには、栄養を蓄えないといけません。そのために大切になってくるのは「光」です。植物を育てるためには、水と二酸化炭素と光が必要になりますけど、お部屋の中は人間が二酸化炭素を出していますよね。だからあとは、光と水と温度に気をつけてあげれば上手く育てられるはずです。窓際に置いておくならそこから差し込む光だけでも問題ありません。お天気をみながら「光が足りないかな」と思うときは外に出してあげてください。



− 温度管理はどうすればよいでしょう?
それも、「人間と一緒」だと思ってもらえれば問題ありませんよ。自分が寒いなと感じたらばらも寒いと感じているので、暖房などで温度調整をしてあげてください。逆に暑いと感じたときはばらも同じです。葉っぱを触ってみると、暑いときは葉っぱの温度も高くなっていたりするんです。

− 葉っぱを触るとわかるなんておもしろいですね。
そうなんです。わからないことがあったらどうしたらいいか考えるでしょう?だから自分で育てるってすごく楽しいですよ。

− たしかに、何も考えずに置いておくだけで綺麗に育ったら飽きてしまうかもしれませんね。
きっと飽きてしまうと思います。ここ滋賀県もばらを育てるには向いていない環境なんです。冬は冬型の気圧配置になって光が足りない。逆に夏は高気圧で暑い。だから、光をどう取り込んであげようかとか、二酸化炭素をどう回してあげるかなど考えてみる。向いていない環境だからこそ、どうしたらいいかたくさん考えていくんです。それがおもしろい。お客様にも考えることを楽しんでもらえたら嬉しいですね。お花はちゃんと結果をだしてくれますから。

− 季節が巡っても、その度に自分の感じたようにばらに接していけばいい。一緒に生きている感じがしますね。
ほんまにそうですよ。人間と一緒やからそう思って接してあげればいいんです。春は気候がよくなっているので植物は頑張って栄養を吸おうとするし、夏は暑いからできるだけ葉っぱからの蒸散を抑えようとする。秋になれば冬に向けて栄養を蓄えて、冬を越えればまた春がやってくる。

− 人間も春になれば薄着になって、冬になれば厚着になりますね。
そう、お腹が空いたらご飯を食べるし、ずっと日の光を浴びなかったらビタミンが欠乏してしまう。そのときに、「この子お水ほしいかな」「光足りているかな」と気にかけてあげてください。なんにも難しく考えることないんですよ。



− 観賞用として「見る」のではなく、いのちとして「見つめる」ことが大切なんですね。



植物は生きています。「生きている」とはどういうことかを考えながら接してあげれば、お花はちゃんとその気持ちに答えてくれます。ばらは環境能力の高い植物なので、お客様それぞれのご自宅の環境に適応しながら、変化していく表情も楽しんでいただけたら嬉しいです。


(文・写真 / 帆志麻彩)

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