【コラム】山や森にならう土作り。ばら自身の持つ力を引き出す「最高品質の土」とは

【コラム】山や森にならう土作り。ばら自身の持つ力を引き出す「最高品質の土」とは

Farmツアーも再開できない今、WABARAが考えていること、國枝啓司が考えていることをみなさまにお伝えしたいと思い、そして、私たちも未来のWABARAのために記録しておきたいと思い、國枝啓司へのインタビューをお願いしました。


不定期の更新ですが、農園の風景とともにお楽しみいただけると嬉しいです。


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和ばらの農園に足を踏み入れると、ばらたちの美しさだけでなく、その土の柔らかさにも驚いてくださる方が多くいらっしゃします。

今回は、和ばらのお話をする上で欠かせないとても大切なこと、「土づくり」について、育種家の國枝啓司がお話ししました。
「今も日々発見ばかり」と語る國枝啓司が、風にたなびくばらを作りたい、その思いを叶えるためにたどり着いたひとつの答えとはー?

 


植物が自分の力で育っていけるように



− 土がとってもふかふかですね。

そう、うちの土はふかふかなんですよ。木くずや落ち葉などの有機物を入れて、微生物を育てているからなんですよ。

− 木くずや落ち葉を拾ってくるんですか?
近所の山から拾ってきますよ。これは全部微生物の餌になるんです。有機物を土に混ぜるとそれが微生物の餌になって酸素を取り込めるようになるので。ふかふかの土は、薔薇のためというより微生物のためです。微生物がいることで薔薇の元気に育つので、結果的には薔薇のためになる。自然の循環ですよね。

− ばらの栽培には山にあるような土が合っているということですか?
和ばらを作る上で大切になってくるのが土なんです。「風にたなびくばらを作りたい」と思ったときに、できるだけ植物が自分の力で育っていけるように、なるべく化学肥料を使わないようにしたいと考えました。ただ、肥料分がないと育たない。植物が育つ条件の中で、光と水と温度を整えてあげないといけないんですけど、もう一つ重要な肥料分に関しては、土の中にある養分を植物の吸える形に変えてくれる微生物の力を借ります。山の土は、雨や落ち葉によって微生物に餌と住処が補給されてます。山や森の土が、目指す形ですね。

− 山や森にならって過剰に手を加えない土づくりをすることで、ばら自身の持つ力を引き出す栽培をされているんですね。
そうですね、過剰に手を加えない。でも考えるところはしっかり考えないといけない。土の中は、土と空気と水でバランスをとっているんですけど、水分が何%かなどひとつひとつ丁寧に考えながら土づくりをしています。有機物ばっかりでもだめですし、バランスが大切なんです。

− 土作りをする中で一番大事にされていることはなんですか?
一番大事にしているのは、測定装置で二酸化炭素濃度を調べることですね。濃度が高いということは微生物が活発に動いている。ひとつ何か試してみることによって色々なことがわかっていくんです。そうして試行錯誤を繰り返していくと、こ
んな風にミミズが住んでいる柔らかい良い土になる。



− 単純に山や森の土を真似るだけでは上手くいかないですか?
交配によりいろんな個性があるので、そこを見分ける必要があります。他よりも栄養を必要とする品種もありますし、収穫を続けるためには、一定以上の温度をかけてやらないとあかんし、病気も出ます。温室内は外とは基本的な環境が異なるので、山や森を参考にしながら、その点調整が必要ですね。その点、外で育つ原種は、本当に強いですね!ほとんど手を加えなくても、自立してぐんぐん育っていきます。

− 原種は栄養を自分で探しにいくんですね。
そうそう。だから私も自分の薔薇にあまり栄養を与えんどこうと思っています。生きているんだから、自分の力でなんとかするやろって。それが本来の自然の形ですからね。

微生物がたくさん住む「最高品質の土」


土作りに力を入れ始めたのはいつごろからですか?
息子が就農してからですね。オリジナル品種を作っているので色々なイベントに呼ばれるんですが、日本でもトップクラスの生産者の展示会が行われたとき、ある日息子が「見た目は細いけどバランスの良い花があった」と言ったんです。その花は土で作られていたんですよね。それで、うちも養液栽培ではなく土づくりをして薔薇を育てようと思いました。自然の力で育ってくれる薔薇を作ろうと。

− 初めは養液栽培だったんですね。土作りも始めたころは苦労されましたか?
全然思うようにいかなかったですね。もっと年月をかけていかないといけないと今でも思っています。ただ、研究施設で土を分析してもらったら最高品質の土になっているという評価はいただきました。



− 「最高品質の土」とはどのような土なのでしょう?
どれだけ微生物が住んでいるかと、栄養のバランスですね。それは評価していただけていますね。

− 啓司さんは、土の上を歩いていると「そろそろ良い頃だな」とわかったりしますか?
もちろんわかりますよ。ほら、こうして枝を指すともっとわかりやすいですよ。表面だけがふかふかではなく、おくまで柔らかいので枝がどんんどん入っていくんです。めくっていくと糸みみずがいっぱいいますよ。

− みみずが良い土の証拠になるんですね。
うん、そうですね。虫もたくさんいますし、ここには微生物を食べるカエルもいますよ。カエルを食べる蛇もでます。



− 咲き終えたばらもこうして土に還っていくのですね。

剪定が一年に一回あるんですけど、ばら自体は元々栄養を持っているので、この落ちたばらたちも全部栄養になってくれるんですよ。色々な微生物が住むようにしてバランスをとることで病気になりにくくなるので、こうしてわざと色々な有機物を入れています。

でも、この方法が絶対ということはないので、今も試行錯誤しながら土と向き合っています。いつになったら一人前になれるんだと思うくらい、薔薇作りから色々なことを学んでいます。日々発見ですね。お客様にも自分で育てる楽しみを感じていただけたら嬉しいなと思っています。

 

▼お話を伺った人
育種家 / 國枝啓司  KEIJI KUNIEDA
1956年、滋賀県生まれ。
1976年に父である國枝栄一が営むバラ園に就農しキャリアをスタート。
1981年、フランス、ドイツ、オランダでの研修で学んだ思想や技術をもとに、いつか「世界中の花屋さんに並ぶバラを作る」ことを夢見て育種家としての活動を開始。
1993年に今上天皇と雅子皇后のご成婚時に雅子皇后自ら選んでいただいたバラ「プリンセスマサコ」を献上。
2003年独立し、現ばら園「ローズファームケイジ」を設園。
2006年、日本の文化・美意識を反映した草花のようなばらのシリーズ「和ばら」をスタート。
そこから約10年をかけて慣行栽培から土耕栽培への移行を実施するとともに、全てオリジナル品種「和ばら」のみを栽培する農園となる。
現在まで60品種あまりを世に出す。

「WABARA」として海外でも高い評価を受け、現在ケニア、コロンビア、アメリカ、イギリス、メキシコ、フランスに提携農園があり、2017年より世界に向け出荷開始。当初志した世界中の花屋さんに並ぶバラの夢が実現し始める。
好きな花はコスモス。まさかの答えだが、風にたなびくばらを目指す由縁である。


(文 / 帆志麻彩 写真 / 高崎健司)

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